舞城王太郎『JORGE JOESTAR』感想(※ややネタバレ)

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舞城王太郎『JORGE JOESTAR』感想(※ややネタバレ) 

(※追記 ネタバレ全開の感想はこちら→舞城王太郎『JORGE JOESTAR』ネタバレ感想

読み終えて、寝て、起きてから「あれは全部夢だったんじゃないか」と思えてしまう。……『JORGE JOESTAR』はそんな作品だった。

誤解のないように言っておくと、決して「夢オチ」ではない。主人公のジョージ・ジョースター(2世)は本編では「イギリス空軍の司令官になりすましたゾンビに殺される」という”運命”が決定付けられているわけだが、そのジョージが死ぬ前に見た幻……なんて「ジェイコブス・ラダー」的なオチでもない。

ハッキリ言って、この作品の展開を予想するのはどんな人でも不可能。物語の主人公は前述のジョージ、つまりジョナサンの息子でジョセフの父である「間接的に殺害」でおなじみのジョージ……の他に、もう一人、ジョースター家に”もらわれ”た、日本人のジョージ・ジョースターがいる。

その二人がそれぞれ奇妙な運命に巻き込まれ、最終的に邂逅する……というのが作品の大まかな流れだ。章ごとに主人公が交互に入れ替わる……という、ちょうど手塚治虫の漫画「火の鳥 太陽編」のような構成になっている。

そして二人のジョージに降りかかる「奇妙な運命」というのがあまりにも突拍子もなくて、冗談抜きで1ページめくるたびに「え?ええ!?」と驚きの連続だ。ネタバレとして差し障りのない範囲で例を挙げると、日本人のほうのジョージの物語の舞台は「杜王町」で、ファンにはおなじみの「あの人」や「あの人」も大きくストーリーに関わってくる。

第一~二部が舞台のはずなのに杜王町が出てくるという時点で「何かおかしい」のだが、最後まで読み終えると杜王町が出てくることぐらい別になんてことないように思える。それぐらいの超展開ということだ。

「同姓同名の別人が存在する」という部分からジョジョファンなら「もしかして……」と考えるだろうから言ってしまうと、その予想は正しい。パラレルワールドが物語の重要なキーとなる。だからジョージ以外にも、色んな「おなじみの方々」が登場する。その中にはみんなが再登場を待っていたであろう「あの御方」も含まれており、終盤は彼が物語を大いに盛り上げてくれる。”本人”の言葉を借りるなら「パーティの準備はいいか?」ってところである。

舞城氏はミステリー作家ということで、きちんと密室殺人や不可能犯罪を暴く……という要素もきちんと盛り込まれている。ただ、ジョジョの世界観において密室なんてありえず、ぶっちゃけ「スタンド出して内側から鍵掛ければそれで終わり」だし、物理的制約についても現実とは大きくかけ離れているので、それを踏まえた上での展開が用意されている。純粋なミステリーとしてはかなり変化球だが、自分は面白いと思った。

事件の黒幕を暴くことでジョジョ本編で不明瞭だった「とある存在に対しての謎」にひとつの解答が示されており、ジョジョファンならその答えを知るためにも読んでおいて損はないと思う。これまた割と突拍子がないので認められない人もいるかもしれないが、「なんでもあり」を許容できる人ならこの作品を大いに楽しめるのは間違いない。

あくまでも本編の補足に留まっていた『恥知らずのパープルヘイズ』や『OVER HEAVEN』と違い、本作は本作のみで独自の壮大な世界観を作り上げているので、単純に優劣を付けるのは難しい。上遠野浩平氏や西尾維新氏にとっては「ずるいよなー(笑)」って気分ではないだろうか(笑)。

「スーパーロボット大戦」がロボットアニメファンの絶大な支持を受け続けているように、この作品もジョジョファンなら盛り上がらずにはいられない要素がこれでもかというほど詰め込まれており、しかもそれを「公式の枠組」の中でやってしまっているとう時点でかなりずるい。もう二度と同じようなネタは使えないだろう。本作を「なかったこと」としない限り、たとえ荒木先生でも手出しが出来ない領域に踏み込んでしまっている。

だがしかし、それだけに面白い。そしてジョジョファンなら読んでおくべきなのは間違いない。全765ページという大作だが、頑張って読破するだけの価値は十分にある。秋の夜長に読み耽るにはちょうどいい作品ではないだろうか。


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